「定義」を変えれば、行動も未来も変わる

「どうせ変わらない」「環境が悪いから仕方ない」「私なんて」。日々の忙しさやストレスの中で、こうした言葉が口ぐせになっていないでしょうか。状況を変えたいのに、なぜか動けない。その背景には、自分でも気づいていない、ある思い込みが隠れていることがあります。

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私たちは「定義」を握りしめて生きている

人は誰でも、「自分はこういう人間だ」「世界はこういうものだ」という前提を、無意識のうちに握りしめています。ここではそれを「定義」と呼びます。この定義が、日々の選択や、とっさの反応、人との関わり方を、静かに決めています。

たとえば「私は要領が悪い」という定義を持っていると、少しのつまずきで「やっぱりダメだ」と受け取り、新しいことへの挑戦を避けるようになります。自分に向けて繰り返すこうした言葉は、知らないうちに「今のままでいい」という指令のように働き、行動そのものを小さくしてしまいます。低いセルフイメージは、その人の可能性に静かにフタをしてしまうのです。逆にセルフイメージが整うと、決断は速くなり、一歩を踏み出しやすくなります。

「反応する人」から、「選ぶ人」へ

つらい出来事が起きたとき、私たちはつい感情のままに反応してしまいます。けれど、刺激と反応の間には、本来わずかな「スペース」があります。そのスペースでいったん立ち止まり、「自分はこれをどう受け取るか」「どうするか」を選べる人を、主体的な人と呼びます。

逆に、他人の欠点や、自分にはどうにもできない状況にばかり目を向けていると、「人のせい」「環境のせい」という被害者意識が育っていきます。コントロールできない経験が重なると、人は「自分にもできる」という感覚(自己効力感)を失い、自分を弱い存在だと思い込みやすくなります。これは意志が弱いからではなく、心の自然な反応です。だからこそ、責めるのではなく、意識して向き合う価値があります。

定義を書き換えると、選択が変わる

握りしめていた定義は、書き換えることができます。「私は要領が悪い」を「私は、ていねいに取り組むタイプだ」へ。「どうせ変わらない」を「小さく一つだけ、変えてみよう」へ。定義が変わると、いつものやり方も、クセも、人とのコミュニケーションも、少しずつ変わっていきます。大げさな決意は要りません。まずは、自分が今どんな言葉を自分に投げかけているかに気づくこと。そして、その言葉を、ほんの少しだけやさしいものに置き換えてみること。それだけで、心は静かに動きはじめます。

小さな実験から始める

とはいえ、長く握りしめてきた定義は、頭で「変えよう」と思うだけではなかなか動きません。おすすめは、小さな実験として試してみることです。たとえば、いつもは反射的に引き受けてしまう頼みごとを、一度だけ「今は手が離せません」と伝えてみる。「私は人に頼れない」という定義を、「頼ってもいいのかもしれない」に置き換えて、一度だけ同僚に助けを求めてみる。大切なのは、結果よりも「いつもと違う選択をしてみた」という経験そのものです。小さな成功体験が積み重なると、自己効力感が少しずつ育ち、握りしめていた定義は自然とゆるんでいきます。

あなたが変わることは、まわりの幸せにもつながる

未来を変えられるのは、環境でも他人でもなく、自分自身です。そしてケアの仕事をする人にとって、自分を整えることは、決してわがままではありません。あなたが健やかに、自分の人生を生きていること。その姿そのものが、目の前の患者さんや、大切な人の安心へとつながっていきます。これまで自分を後回しにしてきた人ほど、まずは自分が握りしめている「定義」に、やさしい言葉をかけてあげてください。

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この記事を書いた人

一般社団法人日本感情労働マネジメント協会 代表理事。約20年にわたり、急性期病院と訪問看護の現場で看護師として従事してきました。マインドワーク®講師として心理学とコミュニケーションの手法を看護・介護の現場に届け、心理的安全性を育てるコミュニケーションカードゲーム「にじつなカード」を開発。「感情労働を、個人の我慢から組織で支える専門性へ」をテーマに、ケア職が健やかに、自分の力を活かして働ける現場づくりに取り組んでいます。

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